「玲子よ、何も、今から、無差別に人を殺して来い、といっているわけではないのだ。それはわかるな?」

信玄に言われて、こくん、と頷いた。

「むやみに殺生をしろといっているのではない。必要最低限、自分の身と、仲間を守るために、相手を倒してほしいのだ」

「………」

「殺す必要がなければ、殺さずともよい。だが、必要があれば、躊躇うな。その躊躇いは、お主だけでなく、仲間の命をも奪う」

信玄の目が鋭く光った気がした。これは、遊びではない、と。承諾したからには、甘えは許されない、とも。

「…わかって…います」

力ない、弱い返事だったが、信玄はただ黙って、頷いた。

「では、幸村から、少しでも多くのことを学ぶのだ」

信玄は、くるっと背を向けた。

「それがお主の、ひいては、お主とともに戦う仲間達の、命を救うことになるのだからな」

黙って頭を下げた。幸村も、隣で頭を下げていた。

「…出陣は明日の晩じゃ、よいな」

「はっ」
「はい」


いよいよ、明日。出陣のときだ。