ふたつの指輪

5.重ねた手と手

「明日から行かないことになった、仕事」


いつものように朝5時半ごろに帰ってきた魁人くんは、ガチャっと家の鍵をテーブルに投げなるなりそう言った。


「え?そうなんだ!

よかったね。うれしい!」


突然のうれしい知らせに、あたしは思わずソファから飛び上がった。

やっぱりね。やめるってわかってても、魁人くんがまだこの仕事をしてるのが嫌だったし。


「……まだ全然二週間経ってないのに、いいの?」


二週間どころか、一週間ちょっとしか経ってないんじゃ?


「ああ、オレも全然やる気出ねぇしさ。

ダチが ”コイツはもういいでしょう”って加勢してくれてさ。

引き留めるのもあきらめたみたいで。

もういいってよ。

あとは休みってことで」

「そっか。よかった」

「ちょっとシャワーする」

「うん」

< 251 / 331 >

この作品をシェア

pagetop