美少女戦士 イグニス・ドラグーン・ユイ!
 自分がまだ幼いからだろうか…

 久々に感じた麻衣の血肉。
 その母親として“質感”は、やはり優しく、そして温もりあるものでした。


 自分がまだ幼いからだろうか…

 いえ……

 「アイ ラブ ユー、マム」
 ユイは麻衣の胸の中で恥ずかし紛れに、覚えたばかりの『動詞』を使って、そう言うのでした。

 「は?」
 

 「言ってみたかっただけだよ!」
 ユイは背中を向け、ぶっきら棒に言いました。 



 今度は麻衣が言い返します。 
 「…… You were named Yui.
 Because we felt as if the child we can love genuinely was "ONLY" you. ……… Needress to say, yui means "ONLY".」


 「は?」
 ユイは麻衣の方へ、ゴロンと体勢を捻ります。


 「言ってみたかっただけ」
 けれど、麻衣はもう反対側を向いていました。
 こういうハートフルなやり取りが一番苦手なのが、麻衣という女性でした。



 …………
 ユイは麻衣の温もりの中で眠りに落ちて行きました。


 今日あった、あまりに多くの不幸……

 “光”も… “バベルの塔”も… “美奈子という女性”も… “闇竜”も…“生首を持った少年”も…。
 それら全ては、この瞬間、ユイの涙として零れ落ち、麻衣の胸へ浸み取られる
のです。

 南竜一の巻き起こすそういった全ての鬱憤は、この瞬間の圧倒的な幸せの前に
平伏すべきに、違いありません。

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