焦れ恋オフィス

「……夏基」

「今は芽依と一緒にいたい」

「……本命の恋人は?今日の飲み会で巡り合えるかも……しれなのに」

「まだ言うか……?」

夏基は呆れたように息を吐くと、軽く私の唇にキスをして

「あぁ、腹減った。なんか食いに行くか?」

私を固く抱いていた腕をそっと外すと、寝室に向かった。

今、食事の話が出て、一瞬気分が悪くなる。

吐きそうだけど、吐けない……みたいな曖昧な気分の悪さ。

これはもしかして、つわりなのかな?

はっと気付いて……そのままソファに腰をおろした。

「着替えるからちょっと待ってろ」

そう呟く夏基の背中を見ながら、妊娠の事を話そうかどうしようか再び悩んでしまう。

私が夏基を想っているのと同じだけ、夏基が私を想ってくれて。

そして私と同じように、私が夏基にとっての唯一の本命の女でない限り。

二人が幸せにはなれないに決まってる。

二人のうち一人が好きってだけじゃ、結婚はできても幸せにはなれない。

授かった子供も幸せにはなれない。

そんな事が私にはわかりすぎるほどわかるから、やっぱり、言えない。

愛し合わない両親の側で暮らしても、子供は幸せにはなれないと身をもって経験しているから。

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