准教授 高野先生の恋人
そんなわけで、世間から見ればお休みの大学教員と春休み中の学生は本日お出かけ。
私たちは、同じく世間から見ればお休みの森岡先生のお宅を目指していた。
数字が大きく書かれたバス停が規則正しく立ち並ぶ駅のバスプール。
馴染みのない番号のバス停でバスを待つ。
「寛行さんとバスに乗るの、初めてかも」
「そっか。いつもは車だからなぁ」
「たまには楽しいかも、一緒にバスも」
「うん、そうだね」
「森岡先生の奥さんに感謝しないと」
車で来ないようにと言ったのは森岡先生の奥さんだった。
なんでも、頂き物の美味しいワインがあるから、と。
「森岡先生の奥さんってお酒好きなの?」
「好きだし強いよ。僕といい勝負」
「そうなんだぁ」
「まあ、彼女は飲んでも飲まなくてもテンション高い人なんだけどね」
そう言って、寛行さんは何か思い出したように、くすりと笑った。