准教授 高野先生の恋人

森岡先生のお宅はマンション建設が相次ぐ郊外にあった。

エントランスで部屋番号を推して[呼出]のボタンを押すと、

「は~い!どーぞーっ!!」

こちらが名乗るより早く、とっても元気のよい森岡先生の奥さんと思しき声が。

「美穂ちゃんは相変わらずだなぁ」

「元気で明るい感じのかたですね」

「君に会うの、すごく楽しみだって」

「えっ」

楽しみっていったい・・・・・・???

寛行さんとも付き合いの長い森岡夫人。

当然ながら昔の彼女“涼子ちゃん”のこともよくご存知でいらっしゃる。

「詩織ちゃん?どうかした?」

「へ?あっ、うんん、何でもないです」

気にしない、気にしない・・・。

私は心の中で呪文を唱えるようにしながら、エレベータに乗り込んだ。

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