KISS OF LIFE

「名古屋の支社からやってきました、南野淳平です」

声優さんみたいないい声が、耳に流れた。

南野淳平（ﾐﾅﾐﾉｼﾞｭﾝﾍﾟｲ）か、ふーん。

とりあえず、南野課長の誕生ね。

それからどうでもいい東雲主任の話を右から左に受け流していたら終わった。

「ねえ、南野課長めちゃめちゃかっこいいよね！？」

終わるなり、七海があたしに声かけてきた。

「そうかしら？

何か彼女いるっぽい」

そう言ったあたしに、
「もう、夢がないんだからー」

七海はアンパンマンみたいに頬をふくらませた。

「いつも妄想ばっかりだから彼氏がいないのよ」

「何よー！

あたしの場合、彼氏がいないんじゃなくて、作らない主義なんですー！」

イーだ！って言うように、あたしは七海に歯を見せた。

「もう、たまにはリアルな恋しなさい」

七海は呆れたように言うと、パソコンに向かった。

リアルな恋って…運命の恋が現実にあったらとっくの昔に結婚してますよ。

頭の中でブツクサ言いながら、あたしは仕事を始めた。