不思議の国のアイツ -暴走族総長純情伝-
「いいよ。・・・ル、ル、ルミちゃ・・・いや、ルミには、昔、カリがあるしな。」
ちょっとうれしそうなコウ。
「え~っと、田村くん?」
「ジュンでいいよ。」
田村ジュンが私を見る。
「それじゃ、ジュンもありがとうね。」
「俺はコウについてきただけだから気にしなくていいよ。」
田村ジュンが、私に優しい笑みを浮かべる。
しかし、その頬には、くっきりとした赤い手形があり、田村ジュンが美形なだけに、そのギャップが滑稽だった。
コウを見ると、先ほどとは変わって少し不機嫌な表情。
「私も帰るね。あんまり遅くなると親が心配するから。」
私は、コウとジュンの2人に別れを告げて、駅へと向って歩き出した。
しかし、その頭の中は、10年ぶりにあった山下コウの変貌を、いまだに、うまく受け入れられずにいた。