砂のお城

懐かしい夢を見た。

「晴!早く早く!遅刻しちゃうよ」

「優花がもっと早く起こしてくれれば、こんなことにならなかっただろ」

「もう!ちょっとは自分で起きる気ないの?」

「俺を起こすのは、優花の仕事だろ」

もう知らない、なんて言いながら優花はいつも笑っていた。

文句を言ったって次の日も必ず俺を起こしに来る。

そんな優花を俺はいつも待っていた。

寝たふりをしていたなんて、優花は知らなかっただろうな。

俺の大切な優しい記憶。

その中に、いつも優花はいた。

優花とは、いつから一緒にいたのかもわからない、世間一般でいう幼なじみというやつで。

この頃は、まさか、俺たちの関係が壊れるなんて思いもしなかった。

幼なじみがどんなにもろく崩れやすい関係だなんて、この頃の俺にはわからなかった。
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