君へ

23

腕の中でもそもそと動き出す温かい存在。
可愛い事にもっと近寄りたいと寝ながら腕を広げて抱き着いてくる。
額を押し付けるのでその度に朝日に照らされて髪がきらきらと輝く。
マシュマロのようなすべすべの肌に思わず手を伸ばす。
くすぐったいのか、でも気持ち良さそうに猫が喉を鳴らすように、くしゃりと笑う。
安心しきった、緩やかな笑みだった。
そして思ってもない一言。
「永久くん…」
嬉しそうに名を呼んでくれる。
「なに?」
堪えても堪えても出てくる笑いを噛み殺して問う。
もそり。
また体が動く。
まさか返事がくるとは予想もしていなかったのだろう。
不思議そうに眉が寄せられる。
でもなおが朝弱いのは昨日で良く分かっている。
後どれくらいこのあどけない寝顔が見れるかな。
「んん」
小さく声を上げて細い指が目を擦る。
中々覚醒出来ないのかもそもそと動き、小さく呻いている。
どの仕草ひとつ取っても可愛い。

まだ半分以上閉じた瞳で意識を起こそうと頑張ってる。
「んん」
可愛い口がアクビをあげる。
それすら子猫のよう。
でも、なおが離れるのが嫌で可哀相だけど少し意地悪してしまう。
起きようとするなおの腰を掴み体を動かさないようにする。
「おはよう、なお」
そのまま驚いて顔を上げるなおを間近に見ながらにこりと笑う。
「え…?」
驚き過ぎて理解出来なかったみたいだけど瞬時に俺と理解するとみるみる耳まで真っ赤になる。
なおは余り表情が変わらないってよく言われるけど(俺には分かるけどね)こんなに素直なのにね。
「な、な、なんで永久く…」
呼吸もままならない程驚いている。
怖がらせるつもりは無かったけれど、余りに驚いて辛そうなので抱き締めてみた。

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