[短編]アスタラビスタ
さよならの前に
潮の匂いがした。
17年間、当たり前に見てきた景色。
この砂浜に立つのも、今日が最後かもしれない。
「ハル、本当に行くんだな」
「…うん」
繋いだ手を、涼が強く握り返してきた。
涼の手はいつも暖かい。
私をずっと守ってくれた優しい手。
私は、その手を放そうとしている。
いや、もうすでに放してしまったのかもしれない。
寄せては返す波のように、心も体も同じ所には居られなかった。
「涼、ごめんね」
「もう決めたことだろ?謝るなよ」