月と太陽の事件簿12/新幹線殺人事件 静岡‐掛川間49・1キロの謎
被害者=容疑者
「どうもはじめまして。警視庁捜査一課の岸と申します」

岸警部はいくぶん緊張した面持ちで言った。

達郎の父親は警視庁のトップである警視総監だ。

いわば社長の御子息が目の前にいるわけ。

ついで言うと達郎のお兄さんも警察官で、階級は警視正。

都内某署の署長で、岸警部より階級は上。

警部が緊張したり、静岡県警の刑事部長がわざわざ応対に出て来るのも無理もない。

二時間ドラマで刑事局長の弟がVIP待遇受けてるの見たことあるけど、それに匹敵するわ。

「父と兄がお世話になってます」

達郎はそう言って頭を下げた。

達郎は高校を卒業してから数年間、海外へと留学していた。

今月になってから帰国するとは聞いていたけど、一体なぜ静岡に?

「発見当時の状況を詳しく伺いたいのですが」

警部はそう切り出した。

静岡県警にも同じことを聞かれただろうが、そこは司法一家の人間。

「僕がひかりに乗ったのは10時25分です」

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