雪情
第19章 究極の愛
【白井の過去ー1】


究極の愛なんて
存在しない。





田崎は突然、

死ぬ前の川上の言葉を
思い出した。





本当に
存在しないのだろうか?





いや、それはきっと……





「俺はある雪の降る晩に

いつものように
家に帰った…」





「お前さんの
マンションのことかね?」





田崎は
白井を探す
手がかりの為に、

一度
そのマンションに
行っていた。





「ああ、そうだ。

あの夜も
街全体が真っ白に
包まれていたっけな…」





白井は窓に顔を上げた。





この雪を見ると、
昔のことを
次々と思い出すようだ。





「俺は外に出かける
ことにしたんだ。

5年も付き合っていた
彼女を
迎えに行くためにな…」





「女がいたのかね…」





田崎は
白井に女がいることは
知らなかった。





男は罪を犯し、

警察から身を潜める
ためにする事と言えば、

女のとこに
転がり込むことである。





そのため田崎は
白井の部屋を物色したが

彼女がいるような
形跡はなかった。





「その様子じゃ
知らなかったみたいだな

当然だ、
あの部屋に
そんなものはないからな」





白井は
うつむきながら
話を続けた。





「すれ違いにならない為

俺は
歩いて行くことに
したんだ。

すると、
途中で電話が鳴った。

相手は彼女からだったよ」





「それは
どんな内容の電話だね?」





「もう家まで
近付いているって
言っていたな。

聞くと、
目と鼻の先にいることが
分かったんだ」





この時は
すぐに逢えると思い、
白井は笑顔で走っていた







早く彼女に逢うために…





大好きな彼女のために…
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