雪情
【雪男ー14】


その後少し沈黙があった



といっても
10秒ほどであり、
すぐ田崎が口を開く。






「そう言えば皆の前で、
なぜワシと一緒に
来るよう
声を掛けたんだね?」







白井は
キョトンとした感じで
答えた。






「だって俺に手錠を
しないってことは、
他の奴等に
俺の正体を気付かせない
為だろ?」







「ああ、
お前が犯罪者って
知られたら
パニックになりかねん
からな」







「ってことは誰にも
言わず、

あんた一人で
全部責任背負って
見張るって意味だろ?」






考えてみれば
そういうことになる。






田崎は否定できなかった






「確かにそうだが……」






「じゃあ不自然に
俺の後を
つけまわさせたら
怪しまれるから、

わざわざ俺がフォロー
したんじゃないか」





白井はここまで
考えていたのである。





だが、
そんな答えに田崎は



「ハハハ!
自分のことなのに
フォローか!」




と笑い出した。






田崎が
犯罪者との会話で、
こんなに笑ったのは
始めてのことである。







一人で責任を背負う
ということは
並大抵ではないが、

田崎はその方法を
選んだのだ。






だけども
こんな重い責任を
背負っているが、

今の田崎にとっては
不思議と気分は悪くない






「じゃあ白井よ、
皆に怪しまれないように
そろそろ戻るか」






と言い
小屋を出ることにした
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