白衣を脱いでキス。



首を傾げてそう尋ねてくれるのは嬉しいし、表情は可愛いんだけど。

声には可愛さの欠片もない。


「…や、じゃない、です」


この人には逆らえないみたい。


「大丈夫。理子ちゃんは資格もってないから事務とか受付の手伝いをしてもらいたいんだ」


再び歩き出した誠さん。

今度はあたしの手を握りながら。


「誠さん、あたしが断るとか考えなかったんですか?」


「理子ちゃんは断らないよ。それにできたら歯科衛生士になって欲しいなぁって思って」


前を歩く誠さんがどんな表情をしてるのかはわからなかったけど、声を聞く限りでは嬉々とした感じ。


「なんでですか?」


まだ将来のことなんて真面目に考えてなかった。


「んーそしたら仕事中も一緒にいれるじゃん」


「~っ」


もれなく真っ赤になったあたしの唇を誠さんは奪う。


「ずっと離さないよ」


ここは近所で評判、連日予約でいっぱいのあおぞら歯科医院。

一歩足を踏み入れたあたしを待っていたのは、極上に甘い治療。





End
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