体験者が語る、臓器移植。
体験者からのメッセージ
「臓器移植をしなければ、存命の道はありません」
 医師から受けた宣告です。

 当時の私は絶望と同時に移植という希望も与えられました。しかし、国内で移植を受けるためには法律や倫理観によってその制限が設けられています。その制限親等内での生体間移植、日本国内での脳死移植と次々に選択肢は削られ、私が生きる術は海外での脳死移植に収束されました。

 海外での移植には保険は適用されず莫大な費用を要します。また帯同者の確保や飛行機での長時間に及ぶ移動のリスク、移動後には食事・気候・言語など異文化への対応が減退した身体に求められます。

 私は進行する病状に追い詰められながらもこの諸問題によって決断を鈍らせていましたが、周囲の方々の励ましや援助が後押しをしてくださり、“海外での脳死移植への挑戦”に断を下すことができました。

 昨年度、日本臓器移植ネットワークに登録されていた移植待機者数は12,000~13,000名です。対して脳死提供の件数は実数で13件と非常に少ないものでした。このように待機者数と提供数が不均衡なため、日本人の脳死移植は海外での渡航移植に大きく依存せざるを得ない現状です。

 しかし、世界的な臓器不足への対応や臓器売買を抑止する観点から、WHO(世界保健機関)が「自国内での臓器移植拡大」を求める指針の決定に動き出したことで、移植環境の見直しを余儀なくされる時代が訪れました。

 かつては外国人の患者を受け入れてきた海外の病院が受け入れを拒否するなど、国外での移植を自粛する方向で世界が動きだしたのです。

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