【短編】プロポーズはバスタブで。
一目惚れした相手がすごくいい人でますます惚れた、なんて話はそうそうないと思っていた。
その“一目惚れ”自体あたしにとっては初めてで、初めて一目惚れしたのが孝明という素敵な人で。
これって運命!!
って疑わなかった。
だから余計、不安なの。
あたしの前から孝明がいなくなったとき、ぽっかり空いた心の穴が埋まる日が来るのかなって。
このまま一生埋まらないんじゃないかって、すごく不安になる。
「行けっ!そこだ、スクイズ!! ・・・・ああぁぁ〜、アウトかぁ」
「ホント好きだね、野球」
「ん? もちろん!」
そんなあたしの気持ち、孝明には分からないよね・・・・。
だって、中継に夢中の孝明の顔はあたしの知らない夏の日の顔。
野球にかけた少年の顔だから。
こういう顔ももう見られないんだと思うと、あたしの目には否応なしに涙が込み上げてきて。
それをまた、静かに拭った。
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