【短編】プロポーズはバスタブで。
 
その15分間の間で、孝明とあたしはいろんな世間話をした。

実家はどこにあるとか、何日くらい帰省するつもりだとか、歳はいくつだとか、どんな仕事をしているかだとか・・・・。

そういう中で出てきたのが、高校野球の話題だった。


「こう見えても、実は高校球児だったんですよ。甲子園を目指して練習して戦って。真っ黒に日焼けなんかもしてたんです」

「そうなんですか」

「はい。・・・・まぁ、結局は予選大会の1回戦でボロクソに負けちゃって、甲子園の夢は儚く散ったわけなんですけど」

「残念でしたねぇ」

「でも、もやしみたいに白くなっても忘れられないんですよねー。俺の中じゃ夏といえば高校野球!って感じで、仕事の都合がつけば球場まで観戦しに行ったりして」

「・・・・野球バカ?」

「ハハッ。そうですね」


孝明は本当に楽しそうに野球にかけた青春の話をしてくれた。

あたしが一目で恋に落ちた爽やかな笑顔はきっとそのときに培ったものなんだろうな、って。

そう思ったんだよね。

その年、あたしは帰省先で高校野球を食い入るように見たんだ。
 

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