CHANCE 1 (前編)  =YOUTH=

1. Kento & Hikaru

バンドカーニバルで俺は、マイクを持って歌っている女神を見つけた。


一つ年下の女子高生、女性ばかりの5人組パンクロックバンド、《B5》のボーカル、吉田光との出会いであった。

俺は、白井拳斗。
大学一年生。
髪はアッシュグレイのベリーショート。

自分ではなかなか分からないが、顔のつくりが外国人の様だと良く言われた。

もしかしたら、ひい祖父さんかひい祖母さん辺りが、フランスかイタリア系の血を引いているのかもしれない。

高校時代は、良く女の子から告白されたが、一言多いとか、唐突に話し出して、意味分かんないとか言って最終的には振られていた。

口は災いの元と良く人は言うけど、まさにその通りである。

音楽以外の趣味ではオタクじゃないの?
って言われるくらいパソコンが好きだ。

今、自宅の俺の部屋には、デスクトップが1台と、常に持ち歩いているノートパソコンが1台有るが、常に最新型を使っている。

おかげで、バイト代は殆ど貯金出来ていない。

高校時代はバンド活動以外、休みの日は建設現場で肉体労働をしていた。

シフトに融通がきくし、何と言っても日給10000円は有り難いのだ。

今俺は、XYZって言うバンドでドラムを叩いている。

バンドの中では一番背が低いが、それでも178cmはあるんだ。

他のメンバーの背が高すぎるのだ。

中学一年生の時、アイアン・メイデンのニコ・マクブレインのドラムに惚れ込み、ドラム教室に通い出した。

メキメキと上達していった俺は、彼の様にライドシンバルを垂直に設置して、シンバルの打面を正面に向けて叩いていた。

彼の事を崇拝していたのだから、当然である。

通常、ライドシンバルは、ほぼ水平に設置するのだ。
家に有るドラムセットもバイト代で買った。

親に金銭的には迷惑をかけたくないからだ。

お父さんは、インターコンチネンタルホテル東京にあるレストランで料理長をしているが、お母さんも同じレストランで働いている。

お母さんは女性パティシエで、二人は職場結婚なのである。

二人の夢は、自分達のレストランを持つことだから、生活費を切り詰めて切り詰めて、やっと来春に自分達のレストランをオープンする事になったのだ。

T大に入った俺は、テジュン、ジョージ、チャンス、KYUと出会い、バンドを組んだお陰でヒカルちゃんと出会う事が出来たのだ。
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