溺愛プリンス

王子>篤さん?


……ガチャン


真っ暗な玄関。
人気のない家の中に、ドアを閉める音がやたらと響く。



「……はあ」



小さくため息をつくと、鍵を下駄箱に置いて、ヒールを脱いだ。



なんだったんだろう……。
ハル、どういうつもりなの?


“深い意味はない”


その言葉だけが、さっきからあたしの頭の中を駆け巡ってく。
浮かんでは消え、浮かんでは消えて……。


そしてまた浮かぶのは……。



そっと触れた首筋。



まだそこには、ハルの唇の感触が残ってる。


どうやって家にたどり着いたんだろう……。
それすら覚えてない。

おぼつかない足取りで、リビングに入って電気をつける。



「ただいま……」



ちょうどスイッチの下に飾ってある写真に向かって、そっと呟いた。

お父さんとお母さん、それから弟の瑞穂(みずほ)とあたしの写真。
みんな笑顔で溢れていて、どこにでもある写真。



「……」



誕生日……か……。


そっと指で触れて、あたしは鞄の中からスマホを取り出した。



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