あひるの仔に天使の羽根を

・格闘

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「だ~か~ら~ッ!!!

どうしてボクと一緒に出席するっていう選択肢を作らなかったんだい、師匠ッ!! ボクは……ボク達は、『KANAN』見たさにここまで来たんじゃないかッ!!」


由香ちゃんの悲鳴交じりの声が部屋に響いた。


櫂は、須臾と共に式典に行ったらしい。


ドアをノックされて聞こえた櫂の声。


――ちょっと須臾と式典に出てくるから。すぐ帰ってくるから芹霞、帰ったら話をしたいんだ。


ドアすらも開けようとしない櫂。


何だかドアがあたしと櫂を遮断しているよう。



……いいもん。


別に誰と行ったっていいもん。


櫂が誰を呼び捨てにしても別にいいもん。



あたしは返事をしなかった。



話って何?


どうしていつものように中に入ってこないの?


距離作って、畏(かし)こまなければ、いえない話?


須臾が気になるって?


だからあたしの存在はお邪魔だって?


言えばいいじゃない、そこから。


人の恋路に口を出す煩い女とでも思っているの?


それとも何?


あたしに相談したいの?


幼馴染は恋の相談役に最適だものね。


だけどお生憎様。


庶民のアドバイスなんて役に立つはずがない。


卑屈?


上等。



大いに笑ってよ。



櫂の気配はまだ続いていたけれど、


――紫堂様、お支度を。


上品な須臾の声に、櫂はドアから離れた。



途轍もなく大きな溜息を残して。



あたしが悪いのか?


溜息つきたいのはあたしの方だっちゅーの!!




完全ふて腐れているあたしの横では、玲くんに馬乗りになって胸をぼかすか叩いている由香ちゃんがいる。


相当、悔しいようだ。


「きっとこの式典で、『KANAN』の説明があるんだぞ!? 最初が肝心なんじゃないか~ッ!!! うわ~ん、神崎。あんまりだと思わないか~ッ!!!」


本当に悲しそうだ。




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