地味男子

蒼井 十夜

「家にいてもいっぱいしゃべりたい……」


 ソファに座りながら独り言。


「誰と? ……俺?」

 ソファの背もたれから伸びてくる祐磨の手。

「きゃっ!!」

「何女みたいな声出してんの…?」

「女です―っ!!」


 祐磨がこんなことを言うなんて珍しい。


「で、誰としゃべりたいの??」

「……隣の人」


 って、あたし何いってんの?


 祐磨ちょっと驚いてるじゃん!!


「隣の人って男?」

「そうだよ…」

「今度のぞきに行ってみよッかな♪」

「こなくていいっ!! たぶん、祐磨が想像してるのと違うと思うよ?」


 祐磨は少し考えてから私の隣に座った。


「俺が想像したのはハッキリ言って地味な奴なんだけど…もしかしてチャラ男?」


 ……弟よ…。


 ビンゴ。


 想像していたのを違うって言った私がバカだった。


「祐磨の想像におまかせするよー。 どうでもいいけど来ないでね?」

「わかんなーい」


 にこっと笑うと立ち上がってお風呂に行った。


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