オフィスの甘い罠
5―シゴト、カゾク
     ☆☆☆☆☆



次の日の朝。



目覚めて顔を洗って、
いきなり濃いメイクを
始めてる自分が嘘みたいだった。



今まで濃いメイクは、
《紫苑》の時間を始める
ためのスイッチみたいな
ものだったのに。




メイクを終えて、髪を
セットして。



最後に、柊弥からもらった
スーツのジャケットを羽織る。



「……………」



鏡の中のあたしは、昨日
までの香川梓とはまるで別人だ。



(このあたしが副社長秘書?

ホントに、これはダレの
気まぐれ?)



柊弥なのか、空の上の方
からあたしを見てる誰か
でもいるのか。



……まぁ、そんなのも
もうどっちだっていいけどね。



なんだかもう柊弥への
怒りも度を超えすぎて、
イミもなく笑いたい気分。
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