アクアマリンの秘密【外伝】
「最近はどう?瑠香と上手くいってる?」

「上手くいくも何も、俺たちはそういう関係ではない。」

「そうかなー?少なくとも星来はそう思ってないみたいだけど。」

「…そうらしいな。」

「でも紫紀にその気はない、と?」


そう問いかけると紫紀はやや表情を固くした。


「…その気がないとか、そういうことともまた違うな。
誰かと寄り添って生きる未来を想像出来ない。ただ、それだけだ。」


〝誰かと寄り添って生きる未来〟


それは酷く甘い響きを持って響く。
それと同時にどうしようもない重さも兼ね備えている。


「…そうだね。オレたちは未来を描くのが下手だ。」

「未来を描く、か。」

「うん。だって未来なんて1秒先ですら不確かだったんだ。
そんな中で未来を描けなんて言われても描けるはずもない。
…ずっとオレたちは幸せな未来を想像することさえ忘れていたんだから。」


紫紀が静かに頷いた。


そうなんだ。
オレたちは未来を上手く想像できない。
幸せな未来を思い描けない。


―――思い描くことすら、しないできたから。
今を生きる道しか残されていなかったから。


でも、今は違うんだ、紫紀。




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