アクアマリンの秘密【外伝】
「紫紀。」

「なんだ。」

「ぼーっとしてるとみーんな結婚しちゃうかもよ?」

「…そうだな。星来と蒼刃は時間の問題だろうし、お前にも…いるしな。」

「それに桃依にもついに春が来たんだって。」

「奴が妙に浮かれていたのはそのせいか。」

「そうそう。緑志だって城内じゃモテモテだしね。奥手な女の子が多くて本人無自覚だけど。」

「…お前、仕事はちゃんとこなしているのか?」

「うわ!失礼だ!オレは対人間で仕事するのがほとんどなんだから、こういうことに敏くなるのは仕方のないことでしょ?」

「…そうだったな、悪い。」

「というわけで紫紀。今度は君の番じゃなーい?」


話を元に戻した。
結局言いたいことはこれだから。


「確かにオレたちは、幸せとか未来とか…そういうのを想像するのが苦手だけどね。
でも、苦手苦手って言って遠のけていたら掴めないまま終わっちゃうんだよ。
苦手なら、とりあえずやってみればいい。
紫紀はどんな未来を想像する?」

「…そうだな。」


視線をどこか遠くへやり、言葉も発さずに空だけを見つめる。
そんな紫紀の横顔の奥に一瞬だけ白い雪が見えたような、そんな気分になる。


―――ほら、ね。紫紀がそんなんだと、華央だって安心できないよ。


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