アクアマリンの秘密【外伝】

「…お前は変わったな。」

「そうか？」


少し幼げな表情を浮かべてそう問う朝霧紫紀。
変わったことなんて、自分が一番気付かないものなのだろう。


「表情が変わりやすくなった、な。」

「お前はまだ固いな。」

「…そんなのは分かっている。」

「時間が必要だ。笑うことすら忘れてしまった人間には。」

「……かもしれん。」


おそらく朝霧紫紀も忘れてしまった人間なのだろう。
でも、今は違う。


「だが、笑顔を向けてくれる存在がいれば自ずと変わる。
むしろ変わらざるを得ない。」

「姫君のことか？」

「…そうだな。だが、星来だけじゃない。
俺に関わる全ての人が、俺を変える。
…自分では意識していなくてもな。」


とても穏やかな表情を浮かべながら、朝霧紫紀はそう言った。


「お前もその一人だよ、瑠香。」

「え…？」


思いがけない言葉に思わず顔を上げた。