アクアマリンの秘密【外伝】
「だから、ありがとう。」

「な…ど、どうしたんだ、いきなり…。」

「感謝の意だ。
俺に関わってくれたこと、出会えたこと全てに。
今日はお前の誕生日だろう?」


…誕生日を祝われたことなど一度だってない。
だから正確に誕生日は覚えていない。


だったら、今日でいい。今日がいい。
ただ、ありがとうと言われるだけでこんなにも満たされる。


「素直すぎて気味が悪いな。」

「…失礼だな。
本当はお前だって言いたいくせに。」

「何をだ?」

「星来にも、みんなにも…ただ言えばいい。『ありがとう』と。
それだけでお前の気持ちをきっと全て伝えられる。
…伝えられると、いいな。」


そう言ってふわりと優しく、大きな手が頭の上に乗った。
くしゃっと少しだけ撫でられる、どこかくすぐったい感触。


「な…!気安く触るな!」

「別に気安く触ってはいない。励ましただけだ。」

「う…うるさい!私はもう寝る!」

「…そうか。それでは、お休み。ゆっくり休め。」

「分かっている!」


…分かっている。
伝えたいことも、伝え方も。


ただ、まだ…どうしても、それは言えない…けれど。


*fin*

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