白銀の女神 紅の王Ⅱ



その小さな背を見ながら、心の中で深いため息をつく。

本当に……俺の調子を狂わせるのはお前だけだ。

こんな事をされて、“忘れろ”はないだろ。



「エレナ、こちらを向け。」


エレナの背に向かって声をかける。

そして――――



「………?」

逆らうことなくこちらを振り返ったエレナを正面から抱きしめた。



「シルバっ!?」

横になって抱き寄せた俺にエレナは驚く。

しかし、抵抗はなかった。




「早く寝ろ。」

頭を抱え込み、狭いベッドの中で抱きしめれば何も言わずすり寄ってくるエレナ。

エレナがほっとしたように肩の力を抜き、胸に擦り寄って来た瞬間。



「キャンッ!」

「きゃっ!」

子犬が一声鳴いたかと思えば、ベッドに上がり俺とエレナの間に割り込もうとする。

何が何でも割入ろうとする子犬。

結局、エレナの胸にうずくまる様にして落ちついた。



「お休みなさい、ニコ、シルバ。」

ふわりと微笑むエレナ。


「あぁ。」

まぁいい……

エレナの笑顔を見て思う。

エレナを真に手に入れるまでにはまだまだ時間がかかりそうだ。

イースト地区に向かうテントの中、そんなことを想いながら夜は更けて行った――――




END

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