甘きゅん【完】



「なんで颯斗が教室にいるの?」


相変わらず柚月は素直じゃない。


中3の2学期終業式。


唇をつんと尖らせて、そのくせ真っ赤にそまった頬で俺を見上げる。


「撮影で――…。
可愛い女の子達に囲まれて、にやにや鼻の下なんか伸ばしちゃってればいいのに」


心とは裏腹に、思ってもいないことを口にして。


「颯斗がいると、教室が騒がしくなって、迷惑なんだよね」


次から次に、俺のもとに寄ってくる女の子達にしかめっ面をして。


「パーティのしすぎで、怪獣並に太っちゃえばいいのに!」


可愛くない捨てゼリフを残して、きびすを返す。
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