フルーツ ドロップス

帰り道

校門に着くと、案の定、
 「遅いよ。兄弟。」
 「待ちくたびれた~。」
先帰ってていい、って言ったはずの千弘と千夏が
校門の長い階段のところに座っていた。
 「先、帰っててって言わなかったっけ。」
 「言った。」
携帯を見たまま千弘が答えた。
なら先に帰ればいいのに。
 「帰ろう。今日は理は生徒会、桃は部活でいないし。
久しぶりに三人で帰るんだからさ。」
 「…そうなの?」
千弘は今知りました、みたいな顔で千夏を見た。
 「…じゃ、帰ろう。」
俺がそう言って、二人を追い越して歩き始めた。

長い階段を下りながら俺はふと考えた。
昔は三人で入る事が、当たり前だったってことに。
仲間はずれなんかない。
一人でいることも、二人でいることも、
いつも三人だったから。
手に握っていた飴を見る。
 「あ、飴じゃん。いーなぁ。」
千夏はそう言うと、みかんの飴をとった。
ピリッと封を開封して千夏は口に放り込む。
千弘も手からレモンを取って、食べ始める。
 「千空くんは、りんご、すきだもんね。」
 「…食えば?」
二人は舐めながら俺を見て、そう言った。
その姿を見ながら、俺は思ったんだ。

二人は‘変わってない‘。

いくら一人でいても、
先に帰っててって言っても。
これからも、俺たちの仲は
‘三兄弟‘のまま。
安心したのか、りんごのハイカラな絵が
急に可愛らしく見えた。
封を開けて、指でつまんだ。

 「……今から食べるトコ。」
 「フーン。……ね、今日の夕飯当番、誰?」
 「千夏。」
 「え、違うでしょ。千空だよ。」
 「千弘だろ。この前俺が変わりに作ったじゃん。」
 「もうこの前作った。」
そんな会話をしながら、家に帰った。

地面に映る影は、
細くて、長かった。
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