『……姫……鵜目(うのめ)姫…』


遠くから呼びかけて来る声が在った。

とても優しくて、応えないとだんだん拗ねたような口調になってきて、息吹は辺りを見回して、呼びかけた。


「誰…?鵜目姫って…誰?」


『見つけた…。鵜目姫、やっと見つけたよ…』


「鵜目姫っていう人を捜してるの?私も手伝うから姿を見せて。あなたは誰?」


『…俺は鬼八。鵜目姫…今度こそ今生で結ばれよう。今度こそ離さない』


「だから私は息吹…」


『俺を封印した憎き百鬼夜行の王の血筋を絶やしてやる…!鵜目姫、必ず迎えに行くよ。待っていて』


「え…、あの…」


――はっと目が覚めた息吹は、主さまから腕枕をされていた。


「夢……」


「…どうした」


少し寝ぼけた主さまがきゅっと抱きしめてきて、口から心臓が出そうになりながら胸を押した。


「夢を見ただけっ。主さま少し離れてっ」


「俺を意識してるのか?子供のくせに…」


…明らかに寝ぼけている。

こんな無防備な主さまも珍しく、滅多にないことなので、そっと懐に飛び込んで頬を摺り寄せると、頭を撫でてくれた。


「熱は下がったみたい。だから連れてってくれるよね?」


「ああ。……眠い。お前ももう少し寝ておけ…。でないと…夜は……」


すぐに寝息を立ててしまい、“鵜目姫”と呼ばれたことを言えず、また息吹も主さまの体温でうとうととして、


そして数時間後――


息吹がぴったりくっついて腕の中で眠っている有り得ない光景に、主さまは叫びだしそうなほどに動揺していた。


「何故…俺の手は何を…」


腕枕をしつつ、もう片方の手はしっかりと息吹の身体に回っていて、ふわふわとやわらかい息吹の身体に煩悩が暴走しそうになっていた。


「…そう言えば、長い間女を抱いてないな…」


息吹を拾う前からだから、もう16年は…


――気まぐれに拾い、気まぐれに育てて逃げられ、美しくなった息吹はもうそろそろ食い時。

だが、絶対に食うわけにはいかない。


「…ちゃんと守ってやるからな」


高千穂の悪鬼・鬼八を封印するまでは、安心できない。

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