いい雰囲気になると何故かそれを察知した晴明が部屋に乗り込んでくる――


それが日常茶飯事になっていたので、主さまは膝から息吹を下ろすと腰を上げた。


「どこに行くの?」


「見てろ」


優しい声色でそう言いながら戸を開けると…そこには絡新婦が立っていた。

着物を肩口まではだけさせて着崩した絡新婦は燃え盛る炎を瞳に宿しながら主さまに詰め寄り、部屋の中へと侵入してきた。


「主さま…もうここには来ないんですか?もうあたしのことは…」


「もう来ない。それが不満ならば百鬼から抜けろ。引き留めもしなければ、お前とは夫婦になるつもりは元々なかった」


先程までの優しい声色とは違い、ぐっと冷淡になった声で絡新婦を突き放す主さまに…ぞっとした。


自分には優しいけれど、主さまと絡新婦関係性がよくわからない。

身体だけの付き合いというのはわかっているが、そんな大人の付き合いが理解できない。

その背中を見つめ続けていると、そんな視線を感じたのか主さまが振り返り…目が合うと目元を和らげて安心させるように口角を少しだけ上げて笑った。


…特別扱いをされていることは嬉しい。

嬉しいけれど、主さまは言葉数が少なく、安心させてくれるようなことをあまり言ってくれない。


それが不安要素でもあった。


「…百鬼からは抜けません。私はここで…お待ちしております」


「勝手にしろ。俺たちは明日発つ。息吹には絶対に手を出すな」


「…わかりました」


絡新婦が顔を覆って飛び出して行き、息吹は唇を尖らせて俯きながら黙っていた。


主さまは傍らに座ると顎に手をかけて無理矢理上向かせながら不思議そうな顔をしていた。


「どうして膨れている」


「絡新婦さんは主さまのことが好きなのに…あんな冷たい態度…」


「俺にはその気が無い。その気も無いのに優しくしてどうする」


「そう、だけど…私…あんな態度取られたらすっごく傷ついちゃう」


「お前にはしない。絶対に」


主さまが指をわきわきさせてためらいつつ膝の上に乗せていた手に触れてきた。


「絶対にしない」


また繰り返し、指を絡めてきた。

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