契約恋愛~思い出に溺れて~


「それに、子供には父親が居た方がいいでしょ」

「……母さんみたいなこと言わないで」

「ここで逃しちゃったら再婚のチャンスなんてないかもよ?」

「それは」


多分そうだけど。
それでも、ユウを忘れるくらいなら一人のままの方がいいと思う。


「もし一人になってもいいのよ。私には仕事があるし」

「まあね。男並みに働けるもんね、紗彩は」


「……うん」


そうだ。

唯一、後ろめたさもなく、認められていると思える事は仕事だけ。

いつまで続くか分からない達雄との関係は、進展の方向にだけは行かないだろう。

私自身、達雄に頼ってる部分があるのは知っているけど、間にあるのは愛情と言うよりは友情に近い。

愛が無いのに結婚するほど、割り切れてる訳じゃない。


「やっぱ、仕事頑張るわ」


それで自分を支えられるようになろう。

仮に達雄を失った時、自分を支えるものは必要だ。

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