「これでふたりっきりだ。返事を聞かせてもらおうか」


途端に卓巳は口調を変える。答えは『イエス』だと決め付けていたといってもいい。

そんな卓巳に万里子が口にしたのは……。


「すみません。やはり無理です。帰って父と相談するつもりです。きちんと話せば、父も私に本当のことを言ってくれるでしょう」


万里子は卓巳の瞳を見つめ、身じろぎもせずに言い切る。あまりの潔さに卓巳は言葉を失った。


「それでは、失礼いたします」


万里子は頭を下げ、その場から立ち去ろうとした。

そんな彼女を見つめる卓巳の目に不思議な光が浮かび――。卓巳がギュッと目を閉じ、再び開いたとき、その光は消え失せていた。

代わって浮かんでいたのは、煮えたぎるような怒りと憎悪。


そして、ウッドデッキから庭に下りようとする万里子に、卓巳はとんでもない言葉を投げつけた。


「それは残念だ。お父上もさぞかし嘆かれるだろう。娘がすでに男を知り、子供まで堕ろしているとなれば」


万里子は振り返り、驚愕の表情で卓巳を見ていた。