妄毒シチュー
なにもの
パタン、と玄関のドアが閉まり誰もいなくなった部屋で
あたしは床に座り込んだまま、ぼんやりとゴミ袋を見ていた。
半透明のゴミ袋から、微かにコータの幼い笑顔が覗いてる。
立ち上がりゴミ袋の中からその写真を拾おうと手を伸ばしかけて、やめた。
ゴミ袋の中の幼いコータから目を反らすように背を向けて、綺麗に掃除された部屋を見回す。
ふたりで撮った写真もプリクラも
コータが持ってきたCDも
借りっぱなしだったマンガの本も
部屋着用のスウェットも
洗面所の歯ブラシもヒゲそりも
みんなまとめてゴミ袋の中。