妄毒シチュー

昨日の夜


コータにフラれた苛立ちを無理矢理発散するように、手当たりしだいに物を投げ、めちゃくちゃに荒れた部屋の中で、ひとり途方に暮れていた自分を思い出す。

昨日の夜はあんなに絶望的な気持ちだったのに。
この部屋のあちこちに染み込んだコータの気配が無くなるなんて、想像も出来なかったのに。

今こうやって綺麗になった部屋にひとり、コータの荷物を全て詰め込まれたゴミ袋を前に座っていても
こんなに落ち着いた気持ちでいられるなんて、自分でも不思議だ。


これは
ビール6本分のアルコールのせいなのか。
綺麗に晴れた真夏の青空のせいなのか。


それとも……
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