おじさんって言うな! 〜現役JKに恋した三十男の物語〜
おじさんって言うな!
「ただいま……」


 玄関のドアを閉めると、その音を聞きつけたエプロン姿の有希が、パタパタとスリッパの音をさせて飛んで来た。


「お帰りなさい。今日は遅かったね? 残業?」


 黒目がちの大きな目で、笑いながら俺を見つめる有希。いつだって可愛いが、今夜は特にそう思う。


「あ、ああ」


「だいぶ疲れてるみたいね? 先にお風呂に入る?」


「いや、いい。飯食べたい」


 有希が俺に作ってくれた、最後の晩飯を。


「ん、わかった。今日のおかずはね、お魚の煮物なの。おじさん、お魚も好きでしょ?」


「うん、好きだよ」


 でも有希は、もっともっと好きだけどな。


「ハラワタを自分で取ったの。偉いでしょ?」


「へえー、それは偉い偉い」


 俺はそう言って有希の頭を撫でた。有希に触れるのは、これが最後なんだろうな。


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