王子様は囚われ王女に恋をする
運命の日
「アリシア様、早くこちらへ!」

ドレスに足をとられそうになりながら
アリシアは侍女たちと城の廊下を走る。

剣の交わる鋭い音と悲鳴が
すぐ後ろまで迫っている。

「この先で王様とお妃様がお待ちです。
我々が食い止めている間にお逃げくださいっ」

護衛の兵士が開けた廊下の隠し扉の中へ駆け込む。

しかし扉はすぐに背後で閉められてしまう。

「待って!兵士たちは…」

扉の外に残された兵士たちを振り返ると
侍女のイライザがアリシアの手を取った。

「アリシア様、行きましょう!」

引っ張られるようにして奥へと続く細い廊下を進む。

しばらく歩くとまた扉があるはずだ。
そしてその先は王族のみが知る広間がある。

「アリシア!」

広間に出たアリシアは、王妃の元に駆け寄る。

「お母様、ご無事でよかった!」

その胸に飛び込むと
その傍らから大きな手が頭を撫でるのを感じた。

「お父様」

手の温もりに泣きそうになりながら
優しいエメラルドグリーンの瞳を見上げる。

「これはどういうことなんですか?!
なぜ急にこんなことに…」

「セナール王国が攻めてきたのです」

「叔父様…」

代わりに答えたのは、父の弟で叔父のトーマス伯爵だった。

「セナールって隣国の?」

アリシアは呆然と立ちすくむ。
その国は彼女にとって特別だったから。

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