王子様は囚われ王女に恋をする
「どうして…?」

頭に浮かぶのは優しい笑顔。

「ここも安全とは言えない。
アリシアはすぐに城から脱出しなさい」

厳しさを含んだ声が
アリシアの意識を現実に引き戻した。

「お父様とお母様は…?逃げるなら一緒に…」

「アリシア」

大好きな温かい手で娘の頬を包み
王は真正面から彼女を見つめた。

「私たちはここに残る。
戦ってくれた兵たちをおいてはいけない。
でもお前には未来がある。生き延びてほしい」

「そんなのイヤですっ。私も残ります!」

アリシアは断固として拒否した。

「そう言うと思っていたよ」

王は小さく笑った。

「アリシア。お母様の最後のお願いよ。
どうか生き延びて幸せになってね」

こんな非常事態だと言うのに
いつものように温かく微笑む王妃。

「お母様、イヤですっ。私も一緒に…」

そこまで言った時
ふいにみぞうちに痛みを感じた。

誰かに抱えられるのを感じながら
朦朧とする意識の中で必死に目を凝らした。

「アリシア、幸せに…」

両親の声を聞きながら、アリシアは意識を失った。
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