さくら色 〜好きです、先輩〜

放課後。

そそくさと荷物をまとめていると…


「西原さん!!」


ほら来た…


「あの、恭介のことなら本人に直接聞いてね!」


私は手を休めることなくその子を見ずに、あらかじめ用意していた言葉を言った。


「え…?何のこと?」

「…恭介のこと聞きに来たんじゃないの?」


予想外の素っ頓狂な声に顔を上げると、スラッとした背の高いボブヘアーの女の子が大きな目をぱちくりさせていた。


「あはは!違う違う!そうじゃなくて。私のこと覚えてない?ほら、入試のときの…」


女の子はそう言って、短い髪をポニーテールに結ぶ仕草をして見せる。


入試のとき?

ポニーテール…?

……!!


「あー!あの時の!!」


確か入試で隣の席になって消しゴム貸した三嶋那奈ちゃんだよね。

あの時は長い髪をポニーテールに結いていたから、ばっさり短くなってて全然気が付かなかった。


「覚えててくれて嬉しい!入試の時は本当にありがとう。もう一度お礼を言いたかったの」

「そんなお礼なんていいのに」

「ううん、ホントに助かったから」


合格発表の日、気になって探したんだけど見つけられなかったんだよね。

それがまさか同じクラスだなんて、こんな偶然もあるんだな。


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