美味しい時間

「お風呂入ろ……」

昨晩は、お風呂に入らず寝てしまったからね。
まずは身体をきれいにして、身も心もスッキリさせなくちゃ。

バスタブに熱いお湯をタップリと沸かすと、パパっと服を脱いで、いきなり
お湯めがけて飛び込んだ。そして、昨日までの自分を消してしまいたくて、
頭のてっぺんまでお湯に浸かった。
だんだん苦しくなってきてザバッと顔を出すと、何度か顔を振った。
すると、何となくスッキリとした自分がいた。


お風呂から出て、ある程度まで支度を終えると、お弁当と朝食の準備をしようと
キッチンに立った。冷蔵庫から食材を出していると、何でも2人分の用意を
していることに気づく。

「はは……何やってんだか、私」

出したものを冷蔵庫にしまっていると、だんだん悲しい気分になってしまった。
そんな気分のままキッチンに立っても、包丁すら握ることができない。
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