悪魔の熱情リブレット
第八幕


 シャッテンブルクの大時計が十一時の鐘を鳴らした。

その音を聞きながら、シルヴェスターは掃除に精を出す。

二階の廊下を綺麗に箒で掃きながら、ちらりとティアナの部屋を見る。

未だ少女は目覚めない。

心配で数分置きに彼女の様子を見に行く彼は、再びその部屋の扉に近づき中を覗いた。

すると、ティアナがベッドの上に起き上がっているのが目に入った。

「ティアナ様!意識が戻りましたか…」

安心したのも束の間。

目の前の少女は突然、狂ったように笑い出した。

「ティアナ、様…?」

普段の少女とは異なる反応を不審に思うシルヴェスターに、笑いながら彼女は言った。

「私はティアナではありませんの。私はゴモリーですわ」

この事実にシルヴェスターは無言で目を見開いた。

「私とティアナの魂を交換しましたの。今頃、私の体にはティアナの魂が入っていますわ。…それで、貴方はアンドラスの部下ですの?」

「…はい」

答えながら戦闘態勢をとる。

「あらあら。気が短い方ですのね。この体はティアナのものですのよ?貴方、傷つけられますの?」

くすくすと笑い続ける少女の顔をシルヴェスターはきつく睨みつけた。


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