悪魔の熱情リブレット

「それよりも貴方、綺麗な顔をしてますのね。これなら、いけますわ」

「え…?」

何のことかわからず頭の中に疑問符が浮かぶ。

「名は何と言いますの?」

「シルシ……いえ、シルヴェスターです」

危うくシルシルと名乗りそうになった。

習慣とは恐ろしい。


名前を教えると、ゴモリーの魂は愉悦の表情を隠しもせずティアナの顔に表した。

「シルヴェスター、私は可愛い女の子が大好きですの。このティアナの体なんて最高ですわ。私が直々に遊んであげたいくらい」

シルヴェスターは相手がティアナを人質に、自分に何かをさせたいのだと感づいた。

「自分はどうすれば宜しいのですか?」

シルヴェスターの鋭い声に臆することなく、彼女は笑顔でとんでもない命令をした。


「女装して下さいませ」


「……………は…?」

「だから、私のために女装して下さいな。可愛がって差し上げますわ。それとも、男の姿のままで私に罵詈雑言を浴びせられ足蹴にされたいんですの?それならそれで構いませんわ。イジメぬいて差し上げますわよ?…ぐちゃぐちゃにね」


 ゴモリーの性質。

それは女尊男卑の同性愛主義。

彼女は「世界の男は全て女にひざまずけ」というスローガンを掲げ地獄の王を尻に敷く魔界最恐の女王だったのだ。


 楽しげな笑い声がシルヴェスターの耳にこだまする。

彼は最悪の二択を迫られ、無表情で冷や汗を流した。





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