二人のひみつ基地
愛子の気持ち


だれも居なくなった校舎の中をゆっくりと歩いた。


カバンを取りに教室に入ると、愛子が私の席の前で泣いていた。


「愛子?どうしたの?」


私が駆けよると愛子が伏せていた顔を上げた。


「り……陸君に……怒られた……」


「えっ?」


「嘘つきは嫌いだって……言われた」


あの強い愛子が声を震わせて泣いていた。


「愛子が嘘つき?」


「り……陸君。沙織の事ばかり気に掛けるから、沙織は光哉と付き合っているって嘘ついてたの」


だからさっき陸君は私に彼を裏切っちゃいけないって言ったんだ。


「光哉の気持ちは前から知っていたから、土曜の夜、私が光哉に告白しろってけし掛けたの。だって……沙織に陸君渡したくなかったんだもん」


「愛子……」


愛子は私の席に座って顔を伏せた。


< 48 / 95 >

この作品をシェア

pagetop