二人のひみつ基地
そんな中で陸君がポツリと言った。
「沙織ちゃん……伊織の為に泣いてるの?それとも自分の為に泣いてるの?」
「い……伊織君の為……」
陸君は空を見上げてため息をついた。
「じゃぁ、僕は伊織には何も言えないな……沙織ちゃんは今でも伊織が大事なんだろう?」
「伊織君は……放っておけない」
「伊織に振られて、伊織に同情する女の子なんて今まで一人もいなかったから、伊織にとって沙織ちゃんは特別なんだね」
そう言って立ちあがって、私の腕を掴んで立ちあがらせてくれた。
「もう、僕はなにも言わないから。あのさ、まだ先の話だけど七月に入ると海開きのイベントがあるんだ。そこでまた、ライブやるから、またみんなで来てよ。無理にとは言わないけどさ」
「うん。みんなを誘っていくよ。和樹君も光哉君もこの間のライブを気にいったみたいだし」
陸君は笑った私に安心した表情を浮かべて
「ありがとう。イベントに向けて特訓しておくから楽しみにしてて」
そう言って陸君は私を一人屋上に残して行ってしまった。