やっぱり、好きだ。
 
 俺の知っている限り、サヤ子は俺と付き合っている間に、他の男と連絡先を交換する様な事は一切していなかった。

 サヤ子の自らの考えでそうしていただけで、俺が強要したわけではない。

 だけど、サヤ子はずっと『俺だけのサヤ子』でいてくれた。

 そんなサヤ子が、目の前で俺の親友と連絡先を交換している。

 これからサヤ子と森田が頻繁に連絡を取り合うのかと思うと、嫌で嫌で仕方がない。




  「にしても、チョコ、多いね」

  森田が紙袋の中からチョコの箱を1つ取り出し、蓋を開けた。箱には色んな形のチョコが並んでいた。

 「全部一人で食べるんだよね??」

 サヤ子がニヤニヤしながら森田の顔を覗くと、森田の顔が少し赤くなった様な気がした。

 「サヤちゃん、このチョコ食べた?? どれが1番おいしかった??」

 頬を赤くした森田が質問を返す。

 「食べたよ。私はこれが1番好き」

 サヤ子がピンクのアルミに包まれたチョコを指さすと、森田はそのチョコのアルミを剥いて、

 「はい。どーぞ」

 サヤ子に差し出した。

  「1人で食べるんじゃなかったのー?? でも、それ食べたいからもらう。ありがとう」

 サヤ子は『ふふふ』と笑いながら掌も

  「手、汚れるから。あーんして」

 森田はサヤ子の口元にチョコを持っていった。

 今度はサヤ子の顔面が真っ赤に染まる。

  「早くしてくれないと、どんどんチョコ溶けるんですけど。俺の指、すげぇチョコくっついてるんですけど」

 森田に急かされると、恥ずかしがりながらサヤ子が口を開けた。

 顔を赤くして口を開くサヤ子はなんかエロかった。

  森田はサヤ子の口にチョコを運ぶと、チョコのついた自分の指を舐めた。




 森田に無性に腹が立った。

 

 お前にサヤ子は渡さない。
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