シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

・嫉妬

****************


綺麗な凜ちゃん。

大人びた凛ちゃん。

格好良い凜ちゃん。


長い髪とスカートを翻して…

強くて…戦える漆黒の美女。


あたしは――

何も出来ない。


あたしは――

ただ見ているだけ。


ただ守られているだけ。



凜ちゃんは、玲くんと久遠と共に屋敷に消える。


凜ちゃんに背中へ手を回された玲くんは、一瞬あたしを見て…強張った顔をした。


そして――

静かに濡れた目を伏せたんだ。



――うわああああ!!



ねえ…玲くん。


顔を強張らせた理由はなんですか?

目をそらした理由はなんですか?


泣いたのが恥ずかしかったからではなく…もしもあたしに対する"罪悪感"が生じた結果だというのなら。


それはどんな起因によるものですか?


――芹霞が好きだよ?



ねえ、玲くん。


もうすぐ結婚してしまう貴方が、

それまでの"自由"に選んだ最後の女性は…


あたしではないの?


玲くんは…

凜ちゃんのこと、知ってたの?


それとも…


一瞬の内にして、染まってしまったの?



凛ちゃんの…闇色に。




玲くんと凜ちゃんの間には、

あたしが立ち入れない聖域があった。


誰をも拒む絶対的領域があった。



悔しい。

妬ましい。


ダレニタイシテ?



あたしは遠くから見ているだけしかできない、そんな無力な立場を思い知らされた。



玲くん…。


凜ちゃんを好きになったの?


あたしは…何?



時間が――

動く。



停滞していた時間が…

ゆっくりと動き出す。



"お試し"終了まで、

あと…


4時間少し。
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