シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

・回顧 桜Side

 桜Side
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私は、許さない。


この怒りを何処にぶつければいいのか。


私は認めない。


目の前で怒った出来事を、どうすればなかったことに出来るのか。


あの時――

真紅の邪眼となった煌の前で、心臓発作を起こした玲様。


私達の肉体は…

極限まで使い切って襤褸雑巾(ぼろぞうきん)に等しかった。


何より玲様は、横須賀一帯の電力を糧として、緋狭様の金翅鳥(ガルーダ)を打ち消すほどの力を放たれた。


それは約束の地(カナン)での魔方陣破壊の時のように、人工衛星という…元々存在しうる強大な力を操るという種とは異なり、電力を自らの力として一から構築していく為、多大なエネルギーを必要とした。


それでなくとも玲様は、休憩なしに闘い続け、走り続け…緋狭様の相手をしてきたんだ。


玲様の心臓には、過度に負荷がかかりすぎたのだ。


倒れ込んだ玲様はニトロを口に入れると、青ざめた顔で…


「櫂、櫂……」


櫂様の名を呼び続けた。


思えば、玲様は予感していたのだろう。


櫂様の…切り札の決行。


否、予感ではなく確信。


櫂様の名前を口にしながら、私の手を払い…這うようにして櫂様の元に赴いた。


その時だった。


――あんたじゃなく、紫堂櫂を愛してる!!!



闇に響いた…芹霞さんのその叫びに…



玲様の動きも――

私も――



凍り付いた。



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