シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

・連係 櫂Side

 櫂Side
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表舞台において――

五皇についての情報は無に等しい。



自らの痕跡を残さず、影で動く人間達。


東京を牛耳る元老院に諂(へつら)い、12人の者達を守る為に存在する特殊な存在。


彼らは皆特殊能力を持ち――

その源は紫堂に連なると緋狭さんは言った。


かつて"約束の地(カナン)"に君臨していた白皇は、そうした五皇の歴史を塗り替えるかのように、自ら野心によって自滅した。


野心――それは愛。


元老院の命によって動く五皇には無縁のはずの私情を抱いた白皇は、この隔離都市に放って置かれ、好き放題に振る舞えた。


今思えば――

それは奇妙だ。


例え背景に藤姫がいたとしても、例え月に数回…この人工都市から出て、元老院に面会していたとしても…元老院が、藤姫が…白皇の私情を許す時点でおかしい。

元老院の許可なく五皇が主体となって、大々的に物事を企てることは、元老院への謀反に至らしめる爆弾を抱えたようなもので、それが許されている時点で、それは元老院の意図的なものか、"泳がされている"のかのどちらか。


現在、元老院でありながら五皇の地位を捨てぬ氷皇は、誰かの命によって動いているのか、自らの意志によって動いているのか、判断がつき難い。


だが氷皇にとって、元老院の地位が"必然"であるのだとしたら、彼は間違いなく"何か"を企てており、元老院はその道具でしかない。


恐らく、それを緋狭さんも知っている。


協力しているのかどうかは微妙だが、対立の立場には居ないのだろう。


いつも出張る氷皇は――

更には、俺の家にまで乗り込んできた氷皇は――


黄色い蝶の出現を期に、俺達に対して…示唆の、裏の役目に回った。


俺達を使って何をしようとしているのかは判らないが、要所要所で顔を出す癖に…大人しすぎる感がある。


だからこそ思う。


これから…俺は青色に染められて、彼の言い様に動かせられるのではないかと。


いや、もう既に氷皇の手中か。


全ては――氷皇の手の内に。

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