シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
氷皇は…彼の意図するものへ俺達を誘う、"案内役(ガイド)"のようなものだ。
結果的に氷皇の思い通りに動かされているだろう俺は、久遠が居るこの"約束の地(カナン)"において、情報隠匿が徹底されている五皇の…"何を"を調べろと、氷皇から示唆されているのか。
何故それを自らの口で言わず、俺にやらせようとしているのか。
ただいつもの性悪故だと片付けていいのだろうか。
「青の兄貴は、何考えているんだろうね」
遠坂が、休憩ということで蓮から出された煎餅をばりばりと囓りながら、溜息混じりにぼやいた。
「氷皇の行動はいつも人を見下して馬鹿にしたものばかり。突拍子もなくてただ振り回されるものだけれど…なんか今回、いつにまして用意周到な気がしないか? ボク達が、無意識にも氷皇の狙い通りの動きをしているから、そう思うかもしれないけどさ」
氷皇…瀬良蒼生。
五皇の歴史に突如現われ、元老院までにのし上がった男。
そして緋狭さんが行動にしているのは…どんな理由の"必然"なのか。
緋狭さんは、氷皇個人の事情を、何処まで把握しているのだろうか。
「一体何やらせたいんだろう。七不思議を調べろと言ってみたり、ゲームだなんて言い出したり。途中くれた情報は、桜華のエロ学園長の黒い真実の証拠、更には黄幡会の寄付金だとか、その他…実験データみたいなものがあったよな。データのコード名が…」
「『TIARA』だったか?」
蓮の質問に、遠坂は頷く。
「そうそうそんな感じ。もうそういう隠語は懲り懲りなんだよね、ボク。胡散臭さばりばりじゃないか。何処の誰かが何をしているのか一切伏して、それだけを見てボク達に何をしろと言っているのかもさっぱり不明。
更にはデータの一部に、ご丁寧に幾重にも暗号化がかけられているから、その解読に時間がかかる。でもまあ…白皇、レグの機械があれば、処理能力が抜群だから、然程時間はかからないだろうけどね」
遠坂はキーボードを叩き、数個のサブ画面に違う種のデータを流した。